「今日は何もしたくない」
「部屋でじっとしていたい、仕事休もうかな」
こんな風に考えることは、誰にでもあることです。
「部屋」は自分にとって、己を守ってくれる場所であり、他の人に侵されることのないパーソナルスペースです。そこにいれば安心でき、外で何かあったらすぐに逃げ込み、自分を傷つけるものからを遮断することができます。
それでも、そこから長期間出られなくなってしまったら、どうなるでしょうか?
これが「引きこもり」と言われる状態です。一度引きこもってしまうと、そこから抜け出すのは想像するよりも、ずっと、ずっと困難です。
今回は引きこもりやすい人の特徴と原因について取り上げていきます。引きこもりになってしまう前に自分がそうなりやすいかどうかを知っておくのは、本人にとっても家族にとっても意味があることです。
ぜひ自分には関係ないと考えず、少しだけお付き合いください!
引きこもってしまう人の10特徴
引きこもってしまう人は、共通した特徴が存在します。引きこもりは誰にでも起こりえることですが、なりやすいタイプかそうではないのかを知っておきましょう。
特徴①:引きこもっている人の7割は男性
現在日本には、引きこもり状態の人が60万人以上いると言われています。
その中には、学生時代からずっと自分の部屋だけで暮らしている人や、大人になってから引きこもった人がいますが、その7割が男性です。
男性の引きこもりの特徴には、
- 競争に負けたトラウマを持っている
- 自分には価値がないと思っている
- デリケートで会話が苦手
などがあります。男性は特に長期間に渡って引きこもることになりやすく、実質、親の年金で生活している方も少なくありません。
特徴②:不登校⇒引きこもりに移行した
いじめやイジリ、仲間はずれなどが原因で、学校に行けなくなる児童生徒は年々増え続けています。その中にはそのまま、引きこもり状態になってしまう人もいるのが現状です。
その他にも勉強についていけないなど、学習面での問題から不登校になることがあります。社会や学校などでできた心の傷が、いつまでも癒されずに残ることで、社会に出ることができず引きこもってしまうのです。
このような不登校からの引きこもりは、長期間に渡ることが少なくありません。長引けば長引くほど、当事者が社会に出るきっかけは失われていきます。
特徴③:人間関係のストレスに弱い
新しい環境に馴染みにくい、人間関係が苦手な人も引きこもってしまう人の特徴の1つです。
引きこもり始めた時期として一番多い年齢は、20歳から24歳であるという調査結果があります。その頃というと、高校を卒業して就職したり、大学に通ったり社会に出始める時期です。
それはまさに、今までとは全く違う環境に直面する頃です。
大学生から社会人になる人なら、それまで学生ノリでやってきた人も、厳しい人間関係のストレスに晒されることになります。先輩、上司、取引先での言葉や態度を使い分け、今までの自分では対処できない場面も増えるはずです。
そんな中で感じた挫折や失敗、叱られたこと、頭を下げた経験などが原因となって『外が怖い』『外の世界に出たくない』と感じ引きこもりが始まってしまいます。
特徴④:人と比較しがちな性格
引きこもりになりやすい人の特徴の一つが、自分を評価する物差しを持っていないという点があります。
自尊心や自己肯定感が低いため、全ての物事を『他人との比較』で判断してしまいます。そして「人と比べて自分が劣っている」と感じ、落胆すると引きこもりが始まるのです。
比較すること自体は悪いことではなく、そこから奮起する人もいるはずです。でも比べることが習慣となり、常に勝ち負けを気にする傾向は常に自分に緊張状態を強いることになるため、そのうち心が疲れ果ててしまいます。
そして「負けるくらいなら戦わないほうがいい」となれば、誰にも会わずに過ごすことを選んでしまうかもしれないからです。
このように比較して負けたと思いこむ、負けるのが怖い、嫉妬深い、このような性格も引きこもってしまう人の特徴です。
自尊心が低い理由と自尊心を高める12個の方法!特徴⑤:自分が嫌い
引きこもり状態の人に、「自分が大好き」な人はほぼ存在しません。
昼間も部屋のカーテンを閉め切り、誰とも話そうとしない当事者はみな、「自分が大嫌い」です。
自分を好きになれない理由や原因は、人それぞれです。幼いころ親に受けた教育やトラウマから、自信を失っている人もいます。学校や社会でトラブルがあり、自信喪失したという人も多いでしょう。
でもそのような人が、すべて「引きこもる」わけではありません。
自信というのは、失ったとしてもまた取り戻せるものだからです。学校や社会、家族の中にいながら努力することで、再び自信を取り戻せる人もたくさんいます。
それなのに、一度自分のテリトリーに逃げ込み、出てくることが出来なくなった人は大変です。自分の部屋の中には、もう一度「自分を好きになれるきっかけ」がないからです。閉じこもれば、ますます自分を不甲斐なく感じ、自分を嫌いになっていくことになります。
特徴⑥:真面目で理屈っぽい
何か嫌なことがあっても、それを笑い飛ばし、ストレス発散をして忘れてしまえれば、引きこもる必要はありません。
ですから自室に閉じこもる人はみな真面目で、問題を忘れず、なんとか対処しようと頑張ってきた人なのです。でもそれが上手くいかずに、どうしようもなくなって、一人で過ごすことを選んでしまいました。
ユーモアを忘れ、何でも正論だけで向かっていくと、時々壁にぶち当たってしまうものです。生真面目な性格の人はそうなりやすく、誰にも助けを求められずに、孤独に悩みます。そしてそのまま、引きこもり状態に陥り出口を見つけられずにいます。
他にも、理屈っぽい性格であるということも、引きこもる原因となることがあります。理路整然と考えられる才能と知識が、何かをきっかけに歪んでしまうのです。
特徴⑦:恋愛、結婚の失敗から立ち直っていない
恋愛などの辛い経験を引きずって引きこもるのは、女性に多くみられる問題です。また彼氏に依存・彼女に依存など、より恋愛対象に深くもたれかかっていた場合は、その傷も何倍にも大きくなってしまいます。
生きていれば失恋や別れは誰もが経験することですが、部屋から出られないほど落ち込むと、そこから立ち直るのはとても難しいものです。
その上、一旦外界を遮断してしまうと、今自分が味わっている破局が、世界で一番の不幸だと思い込むようになってしまいます。それは、失恋以降ずっと部屋に籠っているので、哀しい出来事を上書きしてくれる、楽しいことが何も起こらないからです。
同じように、離婚を経験したことで落ち込んで、誰とも会えなくなる人もいます。一人暮らしをすることになったり、実家に身を寄せたりした後に、そのまま引きこもってしまうパターンです。
こうなると社会人として収入を得ることが出来なくなり、ますます追い詰められていくでしょう。身を縮め、毛布を被って毎日をやり過ごしているその悲しみは、当事者でなければわからない絶望的なものかもしれません。
特徴⑧:発達障害、うつ状態などとの関係
引きこもりと精神的な病、また発達障害などの脳の障害との関係は、とてもデリケートです。
自己判断、素人考えは非常に危険ですが、これらには主に2つの関係があることを知っておくのは助けになるでしょう。
- 元々発達障害やうつ傾向があり、引きこもりになってそれが助長された
- 引きこもったことで、うつや不安障害が起こり始めた
家族や友人から見て、以前から落ち込みやすい傾向があった人なら、医学的ケアを考えてください。また、子供の頃にADHD、LDなどの診断を受けていた人、その傾向があった人も、注意して見てあげなければなりません。
また、引きこもったことが原因で、後からこのような症状が出ている場合は、部屋から出られるようになると急速に回復します。
症状としては、不安障害、強迫症状、妄想や被害念慮など、様々予想されます。もしこのような疑いがある場合は、専門家のアドバイスが受けられるようにできるだけ周りが働きかけてください。
特徴⑨:内弁慶で、外では意見が言えない
外に出ると恥ずかしがり屋で、モジモジしていますが、家に帰ると途端に横柄な物言いをする『無意識の外と中の使い分け』をしている人は、引きこもりの人に見られる特徴の1つです。
自宅に、自分の言う通りになる家族(主に母親)がいて、それをまるで下僕のように扱い、自分は王様然として過ごしています。
本来の子と親の関係が歪んでいると、子供側が親に過剰な献身を求めたり、自分がこうなってしまったのは親の育て方のせいだと憎しみをもってしまいます。親子の関係が良好だったのか、子供のころの親との関係はどうだったのか?という点も引きこもりになる一つの分かれ道といえます。
特徴⑩:引きこもれる現状がある
引きこもったら死んでしまう状況で、人は引きこもり続けることはできません。
引きこもっても食事や、住む場所、最低限のお金があるから引きこもり続けることができるのです。
例えば孤児で施設に暮らす子供には、引きこもれる場所はありません。一部屋に数人で暮らしているような家庭でも、部屋は1つですからこちらも引きこもりは成立しません。
引きこもっている状況は当事者も、家族もとても辛く先が見えない不安が付きまといます。ただ、引きこもっているからには、それが可能な環境にあるのだということを、引きこもっている側も見守る側も忘れないでおきましょう。
引きこもってしまう人の5つ原因!
引きこもりが起こってしまう原因はなんでしょうか?物事には原因と結果が必ず存在します。もし本人も引きこもりの原因に心当たりがなくても、まず引きこもりから脱出するためにはここから紐解かなくてはいけません。
原因①: 普通の家庭に見えるが、実は問題を抱えている
引きこもってしまっている人の多くは、何らかの形で家庭に問題を抱えています。
引きこもりの家族に見られる、一番多い家族パターンは、
① 父親は大卒以上のサラリーマン
② 母親も高学歴、専業主婦
③ 生活は中流以上
④ 虐待、ネグレクトなど大きな問題はない
というものです。どれも「問題の少ない、普通の幸せな家庭」見え、引きこもりを抱える家族自体も『なぜ、引きこもってしまったのかわからない』と答える方が多数です。
このような状況では、問題は外からはとても分かりづらいところにあるといえます。(家族や本人も気づいていないことが原因)
原因②:「受ける」ばかりで「表現」できない性格
幼いころから、テレビやゲームに子守をしてもらっていると、「受信すること」だけに影響される人間に成長します。常に受け身で、自分の意見が言えない性格になるのです。
そういう子供は、一見言うことを聞く、いい子に育っているように見えます。しかし、言われたことに反発心を持ったとしても、それを表現できないだけなのです。そのまま成長すると、「物静かで温和と思われているが、実はドロドロした不満を溜め込んでいる」大人になってしまいます。
このようなタイプは、非常に引きこもりになりやすいタイプです。学校や会社に行きたくなくても、その気持ちや理由を話せないので、ただ黙って部屋に閉じこもってしまいます。
原因③: 人間関係に疲れてしまった
今の社会は忙しく、ただ慌ただしく毎日が過ぎていきます。人との触れ合いは、本来こころを癒してくれるはずのものですが、みな忙しすぎて、心にササクレ立ち、傷つけあってしまいます。
そんな傷を、治す力が弱いときには、自分の部屋が一番落ち着きます。そこで回復してまた、社会で頑張る勇気を出すのです。
ただ疲れたが大きかったり、傷口が広かったりすると再び外へ出る勇気を失ってしまうことがあります。また辛い思いをするのではないか。また心を抉られる出来事が起こるのではないかと思い、足が前へ進まなくなってしまうのです。
原因④:基本的な生活が整っていない
引きこもっている人の多くが、昼夜逆転の生活を送っています。
「人間の体内時計は25時間にセットされている」ということをご存じでしょうか?そのためそのまま暮らしていると、生活時間はどんどんずれていき昼夜逆転してしまいます。徹夜を続けていると、時間の感覚があいまいになり、変に目が冴えたりするのはこのためです。
だから暗い部屋で長時間過ごし、時間の感覚を忘れやすい引きこもり状態では、思考が極端になるのも当然です。
まずは朝は必ずカーテンを開け、太陽を浴びるようにしましょう。気持ちを明るくし、前向きに考えを調整するには、実際に「明るい」状態が必要です。朝起きて、3度食事をし、決まった時間に眠る。この基本的な生活習慣を整えることからはじめてみましょう。
原因⑤: 「引きこもれる環境」の見直し
引きこもりは、引きこもれる環境にいないと絶対に行えません。
社会に一度出た自分の子供が、何かあって実家に戻ってきたとき、親なら誰でも優しく対応することでしょう。しばらくは家でのんびりすればいい、そう心から思うはずです。
ただその時に注意したいのが、子供の態度と感情です。部屋に籠って会話を避ける状態が、数週間続くなら、それは引きこもり予備軍と考えられます。
一度ひきこもってしまうと、再び社会に出るのは大変です。籠る時間が長引くほど、ハードルは高くなっていきます。
もし心配な兆候が見えるなら機会を見て、先のことをどう考えているのか話し合っておきましょう。
責めるのではなく、気持ちを汲み上げてあげることが大切です。落ち込み具合、体調、金銭面の心配はあるのかなど、具体的な感情の起伏や現状を分け合います。
腫れ物に触るように、ビクビクしながら接していてはいけません。半年以内に仕事を見つける、次の住居を一緒に見に行くなど、前向きな努力を後押ししてあげましょう。「引きこもれる環境」だけを与えるのは、誰のためにもならない、ということを忘れないで下さい。
大切な人が引きこもってしまった場合の対処法
ここでは、大切な家族が引きこもってしまった時の対処法を紹介していきます。引きこもりは時間との戦いです。引きこもりが長引けば、長引くほど本人も家族も大きな問題を抱えていきます。少しでも実行できそうな対処法があれば、ぜひ積極的に取り入れてください。
対処法①:しばらくはそっとしておく
引きこもりは悪ではありません。
何があったにせよ、部屋から出たくないと思い詰めている人には、それなりの理由があるはずです。ただ引きこもる理由は、家族どころか自分でも分からないことも多く、無理に問い詰めてもいい結果は生まれません。
引きこもっているのが子供でも大人でも、まず数日はあまり騒がず、そっとしておいてあげましょう。辛いことがあったなら、誰にでも時間が必要です。
この時大切なのは、完全に一人にはしないこと。
別の部屋から生活音が聞こえるくらいがベストです。そして「おはよう」「体調どう?」と気に掛けていることを示してあげます。
また、食事のときには声を掛け、できるだけ一緒に食べるようにしてください。引きこもった人の自室に、三度三度食事を届ける習慣がついてしまうと、それをやめるのは難しいからです。
家族はこのように適切な距離を保ちつつ、いつでも相手の声を聴く用意があることを示しましょう。パイプを太く保つことを忘れなければ、落ち着いてきたときに、何かしらのサインを出してくれるはずです。
対処法②:理解者になることを示し、ジャッジしない
「どうしてずっと出てこないの?」「甘えるのもいい加減にしろ」
「私が悪かったわ」「あなた自身の問題でしょ?」
家族や大切な人が引きこもったら、こんな風にいいたくなるのは当然です。
でも、今はそれを言ってはいけません。引きこもってしまった人に一番大切なのは、「部屋から出られる」ことです。問題の原因、本質、責任などは、その人が部屋を出てくることから比べれば、ほんの小さなことに過ぎません。
とにかく、「あなたの理解者になるよ」と伝えましょう。
どんなことでも受け入れる、いつもあなたの味方だよ、一緒にいるよと言うことから始めてください。
なかなか面と向かって話せないなら、メモや手紙にするのも効果的です。また、SNSなどを利用して、少しずつメッセージを送るのもいいでしょう。その時も引きこもった原因を探るのではなく、「明日、起きたら回転寿司食べに行かない?」というような気軽な感じを心がけます。
引きこもりの原因や責任のことは、全部後回しです。今一番必要なこと、大切にしなくてはいけない事を間違えないでください。
対処法③:専門機関に相談し、長引かせないことが重要
引きこもりが長引く前に、何かしらの手立てを打ってください。
数週間が経過し、その中で会話やメッセージのやり取りが発展しない時には、家族以外の協力者が必要です。
部屋に閉じこもっている本人は、必ずストレスを溜め込んでいます。何かから逃れようとして自室にいるのですが、その行動からもイライラを募らせているのです。これが爆発して、暴力を振るったり、何かを壊したりするようになってからでは遅すぎます。
誰かに相談するのが遅れれば遅れるほど、引きこもりの期間は長引くものです。恥ずかしいとか、世間体がとか、プライバシーがなどと言っている場合ではありません。
熱が出た時には医者に相談しますし、本が読みたいときは図書館で司書にアドバイスを聞くでしょう。引きこもった家族を救うために、精神科医やカウンセラー、引きこもり専門の相談窓口に頼るのは当たり前です。
引きこもりの当事者に心を開いてもらいたいなら、支える家族も閉じこもってはいけません。気持ちを専門家にぶつけて、みんなで一緒に突破口を開いていくようにしてください。
まとめ
引きこもるようになった人には、自分でも気づかない「人格の裏表」があると言われています。
表面では明るく振舞っていて、普通に楽しそうです。
でも裏では人を恐れ、人間関係に疲れを感じていますが、それは言えないのです。
だから普通に生活しているように見えていた人が、ある日突然、「学校、職場に居場所がない」「誰にも会いたくない」と部屋に閉じこもり、引きこもりが生まれてしまいます。
張り詰めた糸が、ぷつんと切れてしまうように。薄い氷の膜が、割れて冷たい水に沈むように。
この記事があなたを、暗い水の底から引き上げるきっかけに、
自分が引きこもりになってしまう予備軍と気づく契機に、
引きこもってしまった大切な人とのかかわり方の参考になることを願って。
コメントを残す